中山道歩き旅~妻籠宿から大井宿まで~【後編】

前回までのあらすじ

中津川市に住み始めて間もない筆者は、梅雨真っただ中の2021年6月30日、中山道を南木曽(妻籠宿)から恵那(大井宿)まで一日で歩くことにした。妻籠宿から山を登り峠を越え、馬籠宿に到着。そのあと軽快に坂道を下っていくが、雲行きが次第に怪しくなって……?

前編はこちら

馬籠宿から坂を下る

10時50分、ついに雨が降り出した。梅雨時期の歩き旅はつらい。
念のためレインウェアは持ってきているが、小降り程度の雨だったので折りたたみ傘でしのぐことにした。

馬籠宿の先
▲写真だと分からないが、小雨が降っている

信州サンセットポイント100選 正岡子規句碑

幸いなことに雨は一過性のものだったようで、しばらくすると止んでくれた。
道端に東屋があったのでここでお昼休憩とする。眺望が良く、中津川市が一望できて爽快だった。

さて、本日わたしがいただくのは……

寿がきやみそ煮込うどん 寿がきやみそ煮込うどん

デデーン!東海の雄、寿がきやのインスタントみそ煮込みうどん!これ美味しいんスよ。(持ってきていたガスとコッヘルで調理しました)

足
▲ついでに靴下を脱いで、足を乾燥させておく。(足の疲労とマメは、蒸れが敵であります)

長めの休憩をとったあと、再び歩き始める。

信濃美濃国境 落合の石畳

山口村の越県合併以前の県境(国境)を越えると、【落合の石畳】が現れた。
説明の看板によると、ここの石畳は3ヶ所・延長70.8mが古いまま残っており、その間をつなぎながら総延長約840mの石畳を復元したのだそう(つまり総延長の9割は復元ということ)。

なるほど鬱蒼とした木々に囲まれ石は苔むし、荘厳な雰囲気の道だが、何と言っても滑る。ちょうど雨が再び降り始め、しかも激しくなってきたタイミング。片手に傘を持ちつつ足元はツルツルで、しかもまあまあの傾斜の下り坂という、体幹が鍛えられること間違いなしの旧道であった。昔の人の足の筋肉はさぞムキムキだったんだろう。

落合宿に到着

長い石畳にうんざりしてきたころ、視界が開けた。田園風景の向こうには町が近い。標高は300m近くまで降りてきている。
そして三つめのチェックポイント【落合宿】に到着!

落合宿落合宿
▲落合宿の説明……読めない(笑)

道しるべ
▲道しるべには「右至中仙道中津町一里」の文字。一里というのは歩いてだいたい一時間の距離。

単調な市街地歩きの途中で

国道19号

落合宿を過ぎ、坂を下りきると、みんな大好き国道19号が見えてきた。都会である。
中山道はこの19号を高架で反対側に渡り、すぐにトンネルをくぐって手前に戻るルートになっている。しかし道しるべが分かりにくく、少し迷ってしまった。どうやら道しるべの看板が中津川→落合の方向に歩く人向けに設置されているようで、逆方向に歩く場合はその文字が見えないのである。
頻繁に振り返り、道しるべを見失わないように気を付ける。やや消耗して、再び旧道の静かな住宅街に戻った。

12時半になった。歩き始めてもう5時間半が経っている。なんだか飽きてきていた。
午前中に歩いていたような風情ある山道は良かった。しかしもう市街地まで戻ってきて、国道19号の横の狭い小道を歩いている。車のエンジン音がブウブウと響く。なんでこんな所を歩いているんだろうという気持ちが次第にムクムクと大きくなってきた。足に痛みもある。帰りたい。

そんな時、小さな坂道を登りきったところに古民家を見つけた。玄関には藍色の暖簾がかかっている。どうやらカフェのようだ。心身ともにやる気が無くなっているし、ここらでちょっと休憩と、ふらっと立ち寄ってみることにした。

立場茶屋越前屋 立場茶屋越前屋

お店の名前はcafe 越前屋

店内にはビートルズのレコードが流れており、いい雰囲気。
メニューを見ると、どうやら「三文餅」というのが名物らしい。しかし季節限定に弱い僕はザクロジュースを頼んだ。なんとデザートもついている!疲れていた身体に甘酸っぱいフルーツがしみわたる……最高♡♡♡

ここは元々は立場茶屋越前屋として、江戸時代に中山道を通る人々向けに繁盛したお店なのだそうだ。最近になってカフェとして150年ぶりに復活したという。昔の人もボクのように、疲れたタイミングで峠の上にある茶屋でゆっくりしたんだろうなあ。立場茶屋=休憩所の存在意義を身をもって知るひとときとなった。

cafe 越前屋
中津川市落合1070
TEL:080-1572-7593
定休日:月木

 

ついに中津川宿、そして…

やる気が復活したボクは、その後は順調に歩を進めていく。19号を横断し、ルビットタウン中津川を横目に進むと、4つめのチェックポイント【中津川宿】に到着だ。

ルビットタウン
中山道道しるべ
中津川歴史資料館
▲中山道歴史資料館で中山道の歴史や全体像を学ぶ。歩く人のためのマップも入手可能。

中津川宿
▲中津川宿は江戸時代、中山道の中でも特ににぎわった宿場のひとつ。全長1,100m、旅籠は大小29軒あったという。

さあ、中津川まで来た。残るは恵那の大井宿。中津川~大井間は約9.8kmと、今回歩いた中では一番長い区間となる。日常生活でも、車で通ることの多い場所。なじみ深い道を歩くというロマンを胸に、がんばっていこう。

と、そこに見覚えのある看板が……。

餃子の王将

ああ~~~吸い込まれてしまう~~~!!!

餃子の王将

いただきま~~~~~~~~~す♡♡♡
よく行くお店に歩いてたどり着く意外性!そして味ももちろん間違いない!

大井宿に見る明治天皇の足跡

王将から先は、中山道は国道19号から北側に少し離れ、閑静な住宅街を抜けていく。道沿いには神社仏閣や馬頭観音、六地蔵などがある。こうしたものが多く残っているのも街道沿いだからだろうか。そんな過去を想像しながら歩くひとときは悪くない。このあたりは解説の看板も充実していて理解もはかどる。

また、人の家の庭や畑をじっくり見ても怪しまれないのも歩き旅の良いところ。我が家の庭も良い感じにしていきたいなあ。

中山道道しるべ
▲ここを左へ。手書きの看板がイカしている。

坂本立場跡
▲坂本立場跡。ここにも立場茶屋があったのだ。

細かいアップダウンを越えていく。大井町の手前、最後の坂は【甚平坂】と呼ばれ、小ぶりな公園が整備されている。眺めも良く、晴れていれば遠方に御嶽山の雄姿を望めるという。
この坂、なかなかすごい歴史があるようだ。明治時代に天皇が中山道を通ることになった際に、坂のてっぺんを2mほど掘り削って低くしたらしい(傾斜を緩めるため)。天皇のために宿を改装するという話は聞いたことがあるが、地面を削るとはなかなか、そこまでしなくても……(笑)
天皇も「ええっ、掘ったの!? 朕のために!?」とか思ったんだろうか。

甚平坂を越え高速道路を渡ると、ついに恵那市街が眼下に広がった。おお、帰ってきたよ!はるばるここまで……(ここでエンディング曲が脳内を流れる)

恵那市 大井宿枡形

そして16時40分、最後のチェックポイント【大井宿】に到着。
古い建物はあまり残っていないが、道の形はそのまま残っている。道が直角に曲がっている所(「枡形」という)が6つもあって、その多さは全国的にも珍しいようだ。

明治天皇大井行在所

大井宿の一角にある古い建物の玄関に立つおじさんと目が合った。おいでおいでしている。招かれるがまま入ってみると……そこは【明治天皇大井行在所(あんざいしょ)】であった。
行在所というのは、天皇が外出されたときの仮の御所のことである。つまりここに明治天皇が泊まったということ。さっき甚平坂で明治天皇のエピソードを読んだばかりだったので、おお、ここにも明治天皇が!とワクワクした。

明治天皇大井行在所
▲この桶で天皇が入浴されたのだ……ドキドキ♡ ※本物です

明治天皇がここに泊まられたのは6月28日。今日が6月30日だから、……(141年前の)一昨日じゃないか!しかも、その日の行程は南木曾から大井までだったらしく、ちょうどボクが歩いた行程と同じである。なんだか運命的なものを感じて嬉しくなってしまった。
明治天皇も足にマメとかできたのかなあなんて想像して、ちょっと親近感がわいたが、よく考えてみるとたぶん天皇は車に乗ったと思う。

行在所の裏側には長屋門という立派な門がある。2021年4月、つい最近になって移築されたばかり。門の鉄部分には猪の目(ハート型)の穴が開けられており、珍しいのだとスタッフのおじさんが話してくれた。
スタッフさん達は、僕が中山道ウォーカーだからか、ややテンションが高く面白かった。大井町のあと、大湫宿までの道のりもオススメらしい。次回はぜひそこを歩いてみたいと思う。

旅の終わりの良い交流シーンとなった。ありがとうございました。

明治天皇行在所
恵那市大井町80番地1
TEL:0573-25-7101
定休日:火(祝日を除く)、年末年始等

 

旅の終わり

恵那駅

17時20分、JR恵那駅到着!
休憩含めて10時間以上、はるばる南木曾から恵那まで踏破できた。歩行距離32.1km。山あり町あり歴史あり、なかなか充実した歩き旅でありました。

やはり足腰には相当な負担があったようで、鈍い痛みがその後一週間ほど続いた。歩き慣れていない人には、いきなり南木曾~恵那をいきなり歩くのは厳しいかもしれない。とりあえずお試しとして、妻籠~馬籠間の山道を歩いてみてはどうだろうか? そして、楽しかったら後日足を延ばして、落合宿、中津川宿、と少しずつ繋いでいく……そしていつかは中山道全区間踏破へ。ロマンあるでしょ?(笑)

あわただしく過ぎ去る現代社会、その真横にひっそりと残る旧街道・中山道。きっと歩くことでこそ見えてくるものは多い。そして、歩き歩いた先に到着する、なじみ深いホームタウンの風景は、きっといつもとはまた違った印象を諸君に与えてくれることだろう。

変わらぬ日常にちょっぴりの変化を与える歩き旅。ぜひぜひ、おすすめです。

実際に歩きたい人へ

概要

・南木曽駅~恵那駅まで 約32km 10時間程度(休憩込み)
・妻籠~馬籠宿は上り坂、落合宿まで下り坂、その後はおおむね平坦。各所に細かなアップダウンあり。
・落合宿以降は退屈なのでがんばってください。
・道しるべが充実しているため事前準備無しで歩けるが、登山アプリなど、位置情報を確認できるものがあると安心。
・詳しい地図は、中津川宿の中山道歴史資料館や大井宿の明治天皇行在所などで入手できる。

服装・装備

・軽登山、ウォーキングに適したアウトドア服
・靴は履きなれたウォーキング用シューズを。登山靴だと後半の舗装道路がきついかもしれない。
・必要に応じて帽子やストック、サングラス等

持ち物

・飲み物、昼食、行動食。特に妻籠~落合間の山間部では、宿場の観光店以外では食料調達ができないので注意。
・雨具、レインウェア
・タオル
・飽きても歩き続けられる体力と気力

中山道軌跡

中山道歩き旅~妻籠宿から大井宿まで~【後編】” に対して1件のコメントがあります。

  1. 長縄ちゃちょー より:

    中山道は私も好きで、今年の3月末に大妻籠に泊まって、翌日中津川まで(元気あれば恵那≒大井宿まで)ウォーキングの予定です。
    また少し道中の予習になりました。ありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です