ご飯、お酒、お茶のお供に!「旅館いち川」の福神漬けの裏側にある歴史と哲学

江戸から数えて46番目の宿場町、中山道大井宿で400年続く老舗旅館、旅館 いち川

宿泊のみならず、料亭としても地域内外の人たちを迎えてきたいち川には、長年愛されてきた、特製の福神漬けがあります。

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どうしてここで、福神漬けを?そもそも、福神漬けってどんなふうにできてるんでしょう?

福神漬け作り真っ只中の季節、16代目女将の市川祥子さんから、美味しさの裏側にある、歴史と哲学を教えていただきました。

初代から約400年。旅館 いち川のルーツ

今の「旅館いち川」の始まりは、初代市川左右衛門が、旅籠屋「角屋」を始めた1624年にさかのぼります。

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▲旅籠屋「角屋」(明治初年)

明治のはじめに「旅館いち川」へと屋号を改め、昭和の始めから料亭の部もスタート。
時代によって地域と様々な関わり方をしながら、ランチや夜ご飯もいただける料理旅館として、今も当時と同じ場所に立ち続けています。

そんないち川の福神漬けですが、実は発祥は、いち川が位置する中山道大井宿の中心、市神神社を守る町内にあるんです。

大井に続く、福神漬けという風習。

市神神社を守っている6つの町内では、100年以上前から、各家庭で福神漬けを作る風習がありました。いち川でも町内の文化である福神漬けを、旅館のお料理やお茶のお供として提供していたのだそうです。

しかし時代と共にその文化を受け継ぐ人も減り、福神漬けを作る家庭はどんどん減っていきました。
その一方で、お客さんから「福神漬けを持ち帰りできませんか?」という声が上がるように。お客さんの声に応える形で、25年前ほど前から、フロントでの販売が始まりました。

6つの町内の文化であった福神漬け作りですが、今では残っているのはたった3家庭

市川祥子さんは、福神漬け文化についてこう話します。

「冬には福神漬けがあるのが当然!と思っていたんですが、段々と作る家庭が減ってきたことに危機感を感じて、ちゃんと残していきたい、と思うようになりました。それに、福神漬けを作る人がいても、召し上がる人がいなくなってしまったら寂しいですよね」

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"もっと多くの方に召し上がっていただき、この文化を残したい。"
そんな思いから、お正月の市神神社のお祭り「七日市」で福神漬けを出すようになりました。七日市をきっかけにいち川の福神漬けを知ったという方も増えてきています。

こだわりは「冬の時期に作るという考え方そのもの

お漬物というと冬のイメージが強いですが、いち川の福神漬け作りは夏から始まります。

白瓜(もしくはまくわ瓜)、しその実、そして茄子を収穫。1つ1つ、塩漬けにしていきます。

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▲まくわ瓜を塩漬けにする女将と料理長

秋頃になると菊ごぼうとしその実を、そして冬頃には、生の大根と人参を一緒にします。

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使われている野菜は、いち川の自家菜園で育ったものや、近隣の農家さんが育てたものなど、ほとんどが恵那山麓エリアで取れたものばかり。

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中でも、東美濃伝統野菜の菊ごぼうは、作っている農家さんが少なく、スーパーや道の駅に行ったり、菊ごぼうを使った商品を作っている人に聞いて回ったり…と、祥子さん自ら、恵那山麓産のものを求めて東奔西走したこともあったのだそうです。

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こうして夏から冬にかけて収穫した野菜を最後に、たまり、みりん、ザラメで漬け込んで完成。防腐剤など、余計なものは一切入れていない、丹精込めたいち川の味が出来上がります。

祥子さんに、福神漬け作りのこだわりは?と尋ねると…

「1年中どんなものでも作れてしまう今の時代に、1年中は作らず、冬の時期に作るという考え方そのものがこだわりです。

例えば、12月1日に販売を開始して欲しいと言われても『今年は大根がまだできていないからもう少し待って!』というふうに、年によって販売スタートの日が違うのも、そんな思いがあるからなんです。毎年この日に作り始める、この日に販売するとは決めずに、季節に合わせて作っていくこと自体が、この福神漬けで大切にしていることですね。」

スーパーで1年中野菜が買える時代に、敢えてそうはしない。
福神漬けには、その時々の恵那山麓の気候や野菜の状態に合わせて、自然のままに続ける哲学が込められているんです。

ご飯にも、お酒にも、お茶にも欲しくなる逸品。

ところで、「福神漬け」と言うと、一般的なイメージは、カレーライスに添えられている、あの赤色のお漬物ですよね。

いち川の福神漬けのおすすめの食べ方は、カレーライスの添え物ではなく…ご飯のお供、お酒のお供、そしてお茶のお供!

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「ゴロゴロ野菜が大きいのが、この町内の福神漬けの特徴です。つまみやすい大きさなので、みんなで集まった時に福神漬けを囲んで、爪楊枝で召し上がる方も多いですね。」

野菜の食感と、深みのある味がくせになり、ふたを開けたら手が止まらなくなる逸品。
家族や親戚、友人とワイワイ囲むのもよし、一人でお茶や晩酌のお供にするもよし、ですよ。

|メッセージ

 

祥子さんは「大井宿は、とても観光地化されている、という場所ではないんです。だからこそ『大井宿の味、大井宿の良さ』というのを皆さんにお知らせすることで、大井宿や東濃に来たことのない方に知っていただき、旅館だけではなくて、大井宿全体が、地域ごと続いていくきっかけになったらいいなと思います。」と話します。

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実際にお客さんの中には、「知人にプレゼントしている」「興味を持って、恵那まで来た」「自分で作ってみた!」という方まで、福神漬けをきっかけに様々な輪が広がっているそう。祥子さんは「フロントや七日市で販売していると、色んな出会いがあって面白い発見があります」とにっこり。

いち川の福神漬けは、12月〜3月ごろまでいち川のフロントで販売しているほか、今年からオンラインでも購入可能です。冬だけの味わいを、そして、大井宿にもぜひ足を運んでみてください。

オンラインショップ

いち川の福神漬けは、Aeru Shop Onlineから。

旅館 いち川
・ランチ 11:30〜14:00
・ディナー 17:30〜22:00
・宿泊 チェックイン16:00〜 / チェックアウト10:00
※予約制。時短営業などの可能性あり。

・福神漬けは店頭販売のほか、電話(0573-25-2191)や、各種SNSからの注文も可能です。

最新の情報や問い合わせ先

Instagram:旅館 いち川 | Ryokan ICHIKAWA【公式】

Facebook:旅館いち川

公式LINE:旅館いち川

Mail:ichikawa400nen@gmail.com

・お食事や宿泊について、詳細はホームページへ。

ご飯、お酒、お茶のお供に!「旅館いち川」の福神漬けの裏側にある歴史と哲学” に対して2件のコメントがあります。

  1. 松原紀子 より:

    何時も美味しい福神漬け、大変なお手間がかかっているんですね!
    何時も美味しく、頂いています!
    ありがとうございます!

  2. 安田 昌弘 より:

    長い人生の中で、“食“は大切なこと!、この、旅館 いち川の、「特製福神漬け」は、絶対に食べておきたい一品です!、旅館の方々が、色々な材料を手間をかけ作り上げた、まさに絶品の、一品です!、是非、多くの方に食べて頂きたいと思います!。

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