100年後に残るからすみを作りたい!高校生たちの1年間のチャレンジ

米粉と砂糖を使った、岐阜県東濃地方を中心に親しまれている郷土食、からすみ。

「100年後に残るからすみを」をテーマに立ち上がった恵那高校の生徒たちが始めたのが、恵那高からすみ部(非公式)です。

萩優奈さん(3年生)林芽生さん(3年生)、新井美悠さん(恵那高校卒業生・名古屋造形大学1年生)の3人が1年かけて活動し、なんと恵那川上屋のイベントでの商品販売まで漕ぎ着けました。

恵那高からすみ部とは一体…!?そして彼女たちが手に持っているからすみ、なんだか私たちの知ってるからすみと違う…!?

その全貌を、からすみ部メンバーと、近くで走り続けた大人たちに取材してきました。

恵那高からすみ部の始まり

 始まりのきっかけは、2022年の春頃に開催された、恵那高校の総合学習のマーケティングの授業。恵那川上屋の清見さんが講師として登壇していたこの授業に参加していたのが、からすみ部の立ち上げメンバーの一人でした。

「授業を元に考えた新しいからすみのアイディアを、本当に形にしてみたい!」

その後集まった高校生3人の熱い想いから、プロジェクトはスタートしました。

 プロジェクトのテーマは「100年後に残るからすみを作る」

このテーマの元になったのは、自分が死んだ後も残るお菓子を作りたいという萩優奈さんの夢。この夢を恵那川上屋の鎌田社長に伝えたところ「じゃあ、具体的に100年後って決めるといいんじゃない?」とのアドバイスをもらい、商品、そして萩さんのテーマも”100年後”がキーワードになりました。

 テーマが決まったからすみ部のメンバー3人は、いよいよ商品開発にチャレンジ。

 まず3人がぶち当たったのは鎌田社長から投げかけられた「どこに向けた商品なのか?」という問いでした。

 「話し合いが始まるまでは、商品開発って、みんなでアイディアを出して、ただただそのイメージ通りになるように食品を組み合わせていくものだと思っていたんです。でも実際はそうではなくて、ちゃんと市場を分析して、何のために売るのか、なぜこれを売りたいのかというニーズやマーケティングが必要なのだと知りました」と語る萩さん。

 商品開発の現実に向き合いチームで何度も考えた末に、ターゲットは高校生に決定!高校生が休み時間や放課後に手軽に食べられる新感覚のからすみを目指して、からすみの味やサイズを決めていきます。

 気軽に食べられるように、サイズは手のひらサイズに。
味の種類は、からすみが米粉でできていることに注目し、ご飯やパンに合うものなら合うのではないかと、お惣菜パンの材料を試してみたり、スーパーマーケットの店内を回ってみたり…。アイディア出しや試作を何度も何度も重ねて、4種類の商品が完成しました!

商品名は、ぷちえある。小さいという意味のぷちと、春のお菓子であるからすみになぞらえ、ギリシャ語で春を意味するえあるを組み合わせて名付けられました。

味は、ベーコンこしょう、抹茶、カレーチーズ、 クリームチーズナッツの4種類。(1個80円)

見た目通りに正統派な抹茶味、甘しょっぱさとベーコンの食感を味わえるベーコンこしょう味も美味しかったですが、編集部の一推しは、クリームチーズナッツ!ナッツの食感と、後味広がるチーズが、想像以上にからすみに合います。

目を引くカレーチーズは、カレーパンのカレーのような、お菓子感覚で食べられる味!

今回の商品開発について、恵那川上屋レシピ研究所の湯川さんは「3人がすごくやる気だったので、本当に面白かったですね。目を輝かせた高校生に、これがやりたい!と言われたら、プロのプライドとしてはそれを実現するしかありませんから(笑)どんな形にするのか、2日3日経っても美味しいと感じるためにはどうしたら良いのか、工夫を重ねて、理想の味に近づけました。」

長年からすみを食べてきた地元の大人も想像がつかない商品ラインナップをなんとか実現。

プロジェクトの始まりからおよそ1年経った2023年、ついに恵那川上屋さんの提案により「工房感謝祭」での販売がおこなわれました。

2,000個のからすみと共に、恵那川上屋の工房感謝祭へ!

恵那川上屋が毎年開催している、工房感謝祭。

スイーツバイキングやお値打ちなお菓子を求めて、たくさんのお客さんが訪れる人気イベントです。


△恵那農業高校の皆さんも出店していました!

お客さんや自分たちの動線をギリギリまで確かめながらテーブルセッティングを済ませ、いよいよ販売スタート!

販売開始の前から、ブースには人がずらりと並びます。

チラシや新聞を見て、からすみ部のからすみを食べたいと並んでいる人たちがたくさん!
恵那高生とのコラボという話題性や、見たことのない味や形が目を惹き、4つセットが飛ぶように売れていきます。

用意した2,000個のからすみは、数時間で売り切れました。

一旦、恵那高からすみ部としての活動はこの日がゴール。3人にこれまでを振り返っての話を聞いてみました。

「実際に販売される商品を作るという、一生できないかもしれない経験をすることができました。」

「ロゴ、パッケージ、チラシのデザイン、全部を自分でやるという、一人のデザイナーとしての活動ができました。またその過程で、色んな方の体験を聞いて、素晴らしい学びがたくさんありました。これからは広くデザインや芸術を学んで、自分の道を進みたいです」

「これまでは、100年後まで残るお菓子を作るためには、食品のことを学べば良いと思っていましたが、経済学や経営学の大切さを知りました。大学で経済・経営を学んで、将来はマーチャンダイザー(商品の開発から販売戦略までを担う人)になりたいです!」

ただ商品を開発ができた、というだけでなく、3人がこれからどこで何を学び、何をしていくのかにも大きく影響する経験になった様子を感じました。

今後の3人の活躍、そして、からすみが100年後も愛され続けていることを編集部も祈っています!

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恵那川上屋
住所:岐阜県恵那市大井町2632-105(恵那峡店)
ホームページ:https://www.enakawakamiya.co.jp/

岐阜県立恵那高等学校
住所:岐阜県恵那市大井町1023-1
ホームページ:https://school.gifu-net.ed.jp/wordpress/ena-hs/

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